中国。中国兵と戦闘しながら行軍していったが、
ある日白壁のかなり大きな家の前に立った時のことである。
表門が堅く閉ざされている。ということは屋内に誰か居ることになる。
別の分隊の兵隊2人が来て肩ぐるまして、
やっと壁の内に這いり閂を外してくれた。
家の入口全体が仏壇になっていた。
ひな壇みたいに何段もあって
最上段の古ぼけた仏像は天井に届きそうで
位牌か花瓶かでいっぱいに飾られている。
387: 名も無き国民の声 2009/07/11(土) 23:04:10 ID:brhkTaJ00
2人の兵隊が奥の間へ行くと入れ違いに
老婆が転がるように飛出して来て
仏壇の前に座り、狂気の様に
白髪頭をふりまわし体全体を
上下に動かして経文を唱えはじめた。そ
れはもう東洋鬼を追い払うには
この仏以外に救ってくれるものはない様に・・・。
尾田軍曹と2人で壁内を巡ったが
豚もいなければ鶏の飼ったふうもない。
田舎のお寺かもわからんなと、
その家を出かかると背後で銃声がし、
経文の絶唱がピタリとやんだ。
奥の部屋から出て来た若い兵隊が老婆を射殺したのだ。
「一度は見逃すつもりで通り過ぎたが、
俺達が帰ったあとでやっぱり家の仏様は霊験あらたかで
日本兵を追っ払ってくれたと自慢気に吹聴されると思うと
思わず引金に指がかかった」と。
回答者・十時時十(福岡県在住)
(「現代民話考2 軍隊」 松谷みよ子 立風書房 P224)
引用元:太平洋戦争中の不思議な・怖い話4